池袋の弁護士浅野剛によるWeb法律相談

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財産開示手続でお金が取り戻せるかも

今回のテーマは『改正民事執行法における財産開示手続』です。

 

先日、財産開示手続に出頭しなかった者が書類送検されたことがニュースになりました。以下引用。

 

「裁判所から財産開示手続きを受けたのに出頭しなかったとして、神奈川県警松田署は20日、民事執行法違反(陳述等拒絶)の疑いで、開成町介護士の男性(34)を書類送検した。署が警察庁に確認したところ、同法改正後、同様の検挙は全国で初めてという。

 書類送検容疑は、財産開示事件の債務者として横浜地裁小田原支部から8月14日開廷の期日への呼び出しを受けたが、正当な理由なく出頭しなかった、としている。署によると、男性介護士は容疑を認め、「無視していれば諦めると思った」などと話している。」(https://news.yahoo.co.jp/articles/fecc0868a057f86dd8079f820ae5d0cdb8b08910

ヤフーニュース参照)



これは、財産開示手続に出頭しなかった債務者に6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性が高いと言うことです。

 

つまり、裁判における敗訴者は任意にお金を払わないと刑罰を受け、前科者となる可能性があるということが明らかになったため、対個人事業主などの事実上回収が難しかった案件についても回収できる可能性が上がりました

 

今回は財産開示手続のポイントについて解説していきます。

 

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相談者: 先生!飲食店を経営している友人にどうしてもと頼まれて500万円を貸しましたが返ってこないということで先生に訴訟をお願いしました。無事全額認容判決が頂けましたが、それでもお金を払ってもらえません。
何か良い方法は無いでしょうか?

 

私:判決をもらっても相手が大人しく払ってくれるとは限りません。その場合はご自身で相手の財産を調査して強制執行を申立てる必要があります。
財産の種類ごとのメリット・デメリットをまとまると次のようになります。詳しくは当ブログ「民事執行法改正で債権回収はどう変わる?」をご参照下さい。結論としては給与が差し押さえられるならそれが一番良いです。

 

預金:お金が引き出されていて空っぽの可能性が高い。
不動産:競売には担保金が必要な上に時間もかかり大変。
自動車などの動産:手間の割に大した値段が付かない。
株などの有価証券:調査することが難しい。
給与:手続が簡単で確実性が高い。ただし、転職されるリスクがある。また、原則として手取りの4分の1までしか差押できないので事案によっては回収に時間がかかる。

 

相談者:相手の人は個人事業主なので給与の差押は難しいですね。財産も詳しくは分かりません。

 

私:その場合、民事執行法財産開示手続を利用することが考えられます。これは、相手に裁判所に来てもらって、所有している財産を開示してもらう手続です。

 

相談者:実際に裁判所に来なかったり、嘘をつくという可能性はないのですか?

 

私:正当な理由無く、裁判所に出頭しなかったり、虚偽の陳述をした場合は6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。これは前科になるので相当なプレッシャーだと思います。

 

相談者:財産開示手続の申立までの流れについて教えて下さい。

 

私:まず、管轄は債務者の普通裁判籍が専属管轄ですので、相手の住所地の裁判所でおこなうことになります。
相手が申立書を受領しない場合は住所地などの現地調査の上で公示送達となります。公示送達がそもそも可能かについて、従前は否定説が有力でしたが、今回の法改正により公示送達も認められる事になりました。
(※公示送達:住所や居所が不明の場合に裁判所の掲示板に貼り出す方法で書面の送達を行う方法。送達が行われたことを相手方が知る機会が事実上無いため最後の手段として行われます。)
申立てにおいて重要なのは不奏功要件の充足が認められるかです。

 

相談者:不奏功要件って何ですか?

 

私:財産開示手続は債務者にとっても大きな負担ですので、債権者(申立人)にとって、知りうる財産についてやれるべき事はやったけれども債権が回収できないという場合でないとできないということになっています。
この、知りうる財産についてやれるべき事はやったということを不奏功要件と言い、決定権者である裁判所書記官に認めてもらわなければ財産開示手続が始まりません。

 

相談者:具体的にはどうすればいいのですか?

 

私:これについては、様々な本に色々書いてあるのを参照したり、他の弁護士から実際に経験したお話しを伺うなどしましたが、結局のところ、東京地裁立川支部で配布された資料の次の基準がおおよその目安になるのかなと思っています。
これによれば、以下の通りの調査が最低限必要になります。

 

不動産:住所地や本店支店所在地の登記簿
債権:勤務先・取引先の調査
動産:調査の結果不明であれば調査結果報告書
その他の財産:本案訴訟の尋問調書等

 

相談者:財産開示手続の費用はどうなっていますか?

 

私:裁判所への手数料が8,000円(印紙2,000円、郵券6,000円)です。※自分でやる場合はきちんとお調べ下さい。
 弁護士費用ですが、訴訟からご依頼頂いている方は着手金5万円、成功報酬5万円。財産開示のみをご依頼の方は着手金10万円、成功報酬5万円です。
※全て税別。成功報酬は何らかの財産の開示があった場合に発生します。

 

相談者:探偵に財産調査を頼むよりは裁判所の手続で財産を調べる方が良さそうですね。よろしくお願いします。

 

以上
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財産開示手続についてのお問合せは次のHPまでお気軽にどうぞ。

www.asano-lawyer.com