池袋の弁護士浅野剛によるWeb法律相談

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養育費、婚姻費用の新算定表について

 池袋の弁護士、浅野剛です。

 

 このブログは身近な法律問題を架空の法律相談形式でわかりやすく説明するものです。

 

 第六回のテーマは2019年12月23日に公表された養育費、婚姻費用の新算定表についてです。ニュースなどでも話題になったホットなトピックですね。

 

 第四回の本ブログで、従来の算定表、計算式について解説しましたので、それとの比較でどこが変わったのか、実務に与える影響はどの程度か、一般の方目線で気をつけることがあるかなどについて触れていきます。

 

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相談者:私には離婚済みの元妻と元妻との子(3歳)がいます。2019年6月某日に東京家庭裁判所で養育費についての調停(「子が成年に達するまで月4万円を支払う」)が成立したので、それに従って現在も養育費を支払っています。


 さて、2019年12月23日に養育費の新算定表が公表されましたが、これが私の養育費支払に及ぼす影響が知りたいです。

 

私:まずは算定表の主な変更点について説明します。

 今回の改訂のポイントはおおきく3つです。


①養育費等算出方法について大枠の変更はないが、税金、社会保険、生活費指数などの統計データを新しいものに更新金額が概ね微増

②養育費支払の終期を原則20歳までと明示

③今回の改訂が養育費増額/減額請求における事情の変更に当たらない旨を明示
(ただし、他の事情により事情の変更が認められる場合、新算定表によるべきとの記載アリ)

 

相談者:①養育費等算出方法は第四回ブログで先生が書いていた通りですね。私は専門家ではないので、簡単にどこが変わったかについて教えて下さい。

 

私:はい。まず、基礎収入算定についての税率や保険料率が最新のものになりました。従前の算定表は平成15年に作成されたものなので大分古かったんですね。他にも租税については復興等特別税が加算され、社会保険については介護保険料が加算されるなどの変更がありました。
 あとは、子の生活費指数が見直され、親を100とした場合、従前は0~14歳が55、15~19歳が90でしたが、新算定表では0~14歳が62、15~19歳が85になりました。これは、14歳以下については生活費の上昇があり、15歳以上については国公立高校の学費低下があったことによります。
 あとは統計データの更新だけですね。
少なくとも一般の方にとっては特に意識すべき変更点はないです。

 

相談者:なるほど。とりあえず、新算定表をベースに考えていけば良い感じですかね。
 それじゃあ、②の養育費の終期について教えて下さい。

 

私:はい。これまで実務上調停や審判で養育費の終期が「子が成人するまで」と定めるケースが一定数ありました。あなたのケースでもそうですね。
ところが、2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられます。これに伴って養育費の支払終期が18歳になるのではないかという点が注目されていました。
しかし、以下の三点を理由に支払終期は20歳と明示されました。

 

⑴我が国の法体系が20歳未満の者が未成熟な面を有し保護の対象とすべきと考えている
⑵大学などの高等教育に進学する者が80%を超えている現状がある
⑶一般に18歳で経済的自立しているという実情がなく、社会的に自立が期待されるという実情もない

 

相談者:まあ調停の時はそこまで深く考えずに20歳までと思っていましたからそれが維持されることが明らかになったというだけのことですね。

 最後に一番重要な③今回の改訂が養育費増額/減額請求における事情の変更に当たらないことについて伺います。
 今回の新算定表によれば、従来の算定表と比べて養育費がわずかに増額されているのですが、これについて、元妻から増額の調停を起こされたりなど紛争が再燃することはあるのでしょうか?

 

私:そもそも一旦決定された養育費(婚姻費用も同様)の変更が認められるには、以下の要件が必要です。

 ⑴合意等の前提となった客観的事情が変更したこと
 ⑵事情の変更が当事者の予見した又は予見しうるものでないこと

 ⑶事情変更が当事者の責めに帰することのできない事情により生じたこと 

 ⑷合意等どおりの履行を強制することが著しく公平に反する場合であること

 

 今回の養育費・婚姻費用の新算定表の発表は上記の要件を充足する事情の変更には当たらないことが明言されています。

 

相談者:ずいぶんと厳しい要件ですね。これを満たすのはどんな場合なんですか?

 

私:この基準は今のところ単なる学説でしかありませんが、今回の新算定表の公表において引用されていますから、ある程度オフィシャルな基準となる可能性があります。
 この条件に該当する典型例はリストラなどで職を失ったケースなどです。単なる昇給や減給では難しいでしょう。また、元妻が産休・育休などで働いていない前提で養育費等が定められたケースでも要件を充足しない可能性が高いと思います。
 特に嫌らしいのが要件⑷で、養育費や婚姻費用の決定には元々裁判所に広い裁量があるところ、よほどの事情でないと「著しく」公平に反するとは言えないでしょう。

 

相談者:ちょっと待って下さい!
事情変更があった場合に増額/減額請求をしたら新算定表を基準に再び決定がされるんですよね?そうすると、元妻が適当な理由を付けて増額調停をして、新算定表に基づく金額で決定をもらうことができませんか?

 

私:それを防ぐために、新算定表の公表自体が事情変更に当たらない旨を明言した上で、事情変更についてこんなにも厳しい条件をあえて引用したのだと思います。
 そもそも婚姻費用や養育費の調停はそれ単独ではよほどの高収入でない限りまとまった金額になりませんし、今回の改訂でも増額は僅かで、増額を認めさせるには上記のような高いハードルがありますからわざわざ再度の調停を申立てるケースは多くないと思います。
 実務に与えるインパクトは小さいのではないでしょうか。あなたのケースでも直ちに何かアクションが起きることは考えにくいと思います。

 

相談者:なるほど!よくわかりました。とりあえず私のケースでは影響はなさそうですね。

 

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